従来の“カミソリ堤防”と俗称されるタイプの堤防と対比される堤防。“カミソリ堤防”の例を挙げれば、昭和32(1957)年から昭和50(1975)年にかけて隅田川等で整備された、コンクリート製、高さ3~4mほどの直立の高潮堤防である。カミソリ堤防により街と川が分断されてしまったという弊害が指摘されていた。
因みに、この名の由来は、防が洪水のために決壊または破堤することを「堤防が切れる」ということから、カミソリ(剃刀)の刃がよく切れることに比喩して、(「切れやすい堤防」すなわち「カミソリ堤防」となったと言われる。
東京都が管理する隅田川、中川、綾瀬川などで、河川内のテラス化と合わせて整備が推進されているスーパー堤防は、従来のカミソリ堤防かを改造して堤防の堤内地側(河川の外側)を堤体と一体化して盛土し、幅を50メートル程度に広げたものとなっている。
国土交通省が管理している江戸川、荒川、多摩川の一部においては、従来の台形型堤防を覆うように堤内地側を盛土し、堤防の幅を堤防の高さの30倍ほどに広げた広い堤防を整備している。
スーパー堤防は「高規格堤防」とも称される。仮に大地震が起こっても、カミソリ堤防と異なり機能の大幅低下がなく応急復旧も容易で、親水性の向上も図れるなどのメリットがある。後背地の土地区画整理事業や市街地再開発事業などと一体的に整備することにより水や緑の豊かな都市の形成にも寄与するなどの利点がある反面、膨大な予算と工事に非常に長期を要することから、“むだな公共工事”として批判されたり、周辺住民の反対運動の対象になることもあった。
〈小口〉